いさなと公園
夜、家族と一緒に公園をランニングしていた時期があった。
12月の今よりも暖かくて、走るとぬるい風が頬を掠めて空が心地よい季節だった。
走っている最中はダメじゃないラジオのDJCDを聴いたり、Strange daySのアーカイブを聴いていた。
それぞれが自分のペースで走っていたため、私は自分のノルマが終わると家族を待つために上を向いてゆっくり歩く。
公園の敷地内にある鉄塔から外へと斜めに通過する電線何本かが見える。
線と線の間に経つと何となく世界の中心にいるように感じられる。
毎日違う空模様の下で、どこか違う世界に取り残されたような感覚になる。
そしてまだ時間が残るため、滑り台に寝転んでまた空を見る。ふと見回すと身長の低い街灯の明かりがたくさんついていることに気づく。
それもまた感傷的な気分にさせられる。
そして斉藤壮馬の「いさな」を流して目を瞑る。
小さな泡の音から始まって汽笛の音が響き、夜の暖かい風がそよそよと吹いてきて、辺り一面は暖かな深海になる。ランニングの疲れも相まって、永遠にここにいたい、そう思うほど心地よい空間だった。
「ゆーあーいんぶるーむ あいしてるってことだよ」
ひらがな表記の歌詞に適したやさしい歌声に包まれる。
毎日毎日見ていた景色なのに飽きずに毎日変わらずに感動していた。その風景に。
なんでそんなに鉄塔の電線に毎日毎日感動できるのかは分からないけど、このおかげで日々のランニングは楽しく出来ていたし、もしかしたら前世鉄塔かもしれない。
今となってはランニングもしなくなったので、過去の話だ。